家庭菜園

ベランダできるキッチンガーデン

 広い畑がなくても、プランター栽培なら窓辺やベランダで小さなガーデニングを楽しめます。
 自分の手で育てることで愛着が芽生え、野菜を味わう喜びを感じることができます。
 とれたの野菜を味わってみて下さい!

野菜別年間栽培カレンダー

タネまき 植え付け 収穫

手軽にできる有機ベランダ栽培

土の再利用

明治大学特任教授●佐倉朗夫

 夏作や秋作が終了してそのままになっているコンテナはありませんか。今回は土の再利用について取り上げます。有機栽培では前作の野菜の残渣(ざんさ)も土の改良に役立つ貴重な有機物として利用します。
 まず、コンテナに残る前作の残渣を、根を付けたまま取り出し土を払います。(1)葉、茎、根は1~2cmの長さに細かく刻み乾かします。このとき、残渣1L当たりぼかし肥料2gを混ぜます。青みが残るものは必ず土から取り出しますが、枯れている小さな葉や細かなひげ根は土に戻します。(2)コンテナから土を取り出し、水やりや作物の根によって硬くなった土を、手でほぐしながら広げて数日間乾かしてから、目の粗いふるいで鉢底石と土に分けます。(3)今度は土を細かいふるいに掛け、細か過ぎる土を取り除きます。(4)コンテナの底に鉢底石を敷き、その上に刻んだ(1)を1~2cmの厚さに入れますが、このとき入れ過ぎないことが重要です。(5)その上に(3)を詰めていきますが、ある程度入れたら腐葉土を厚さ2cmほど敷き、表面に米ぬかをパラパラと振ります。その上にさらに土を入れ、コンテナの9分目まで入ったら表面を平らにして完成です。
 使用するまでの間は、コンテナを不織布(寒冷しゃ)で覆い、乾燥しないように適宜水やりをして保管します。不織布をトンネル状に設置しておくと、はす口を外したじょうろの先で不織布をこするようにするだけで、そのまま水やりができます。
 古土の再利用のための処理は2作ごとに行うとよいでしょう。ただし、連作を嫌うナス科、マメ科、ウリ科などの野菜は、同じ科の野菜を同じコンテナで連続して栽培しないように注意します。栽培が終わったコンテナの土には必ず虫(幼虫)がいるので、見つけ出して取り除くこと、病気になった株の葉、茎、根はコンテナに戻さないことが重要です。

春~夏作

  • キュウリ(ウリ科キュウリ属)

    土壌医●藤巻久志

     キュウリの原産地はインドのヒマラヤ山麓です。漢字で「胡瓜」と書くように、西域から中国を経て日本に渡来しました。
     キュウリは果皮が緑色ですが、黄瓜とも書きます。実は私たちが食べているキュウリは未熟な果実で、熟すと鮮やかな黄色になります。採種はヘチマのように大きくなった「黄瓜」からします。
     40年前までのキュウリは、暑さなどから実を守るブルームという、ブドウやプラムなどと同じような、白い粉を吹いていました。ブルームを農薬と勘違いする消費者もいました。近年流通しているほとんどのキュウリは、カボチャ台木に接ぎ木して、果皮がしっかりして色つやが良く、日持ちするブルームレスキュウリです。ブルームレスキュウリは風味や歯切れが悪いといわれ、キュウリの消費量は年々減っています。
     キッチンガーデンでは、自根のおいしいブルームキュウリを作りましょう。
     日当たりと風通しの良いベランダなら、鉢やプランターでも栽培できます。地温が高い6~7月では、じかまきができます。
     10号(30cm)以上の鉢か大型プランターに市販の培養土を入れ、中央に種を3~4粒まき、種の厚さの3倍(約1cm)の覆土をします。順次間引きして、本葉3~4枚までに1本立ちします。
     キュウリは水を好むので、水やりは毎日、朝やって夕に土の表面が乾く程度にします。追肥は1000倍の液肥を1週間置きに施します。
     つるが伸び始めたら2mくらいの支柱を立てて、ひもで軽く縛って誘引します。ネットを張って緑のカーテンでの栽培もできます。
     低位節(4~5節)から発生した側枝や雄花は摘み取ります。親づるが人間の背丈くらいまで伸びたら摘芯(先端を摘まむ)します。5~6節以上から出る子づるは葉2枚を残して摘芯します。果長が約20cmになったら収穫です。生育が早いので、果実が大きくなり過ぎないように注意します。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ナス(ナス科ナス属)

    土壌医●藤巻久志

     野菜の品種は交配種が主流となり、固定種の地方品種はどんどん少なくなっています。そんな中、ナスはいまだに地方独特の品種が栽培されています。大長、中長、小丸など形の違いだけでなく、果皮が白や緑のナスもあります。
     家庭菜園では好きな品種の種を取り寄せて栽培するのが一番ですが、ナスは育苗が難しいです。インド原産のナスの発芽適温は25~30度、生育適温は20~30度です。種まき・育苗期の2~4月に適温を長期間確保するには、加温施設が必要です。
     ベランダ菜園では5月に苗を購入して栽培するのが一般的です。以前は中長ナスと米ナスくらいでしたが、今は数多くの品種の苗が店頭に並んでいます。
     日当たりと風通しの良いベランダで、10号(30cm)以上の鉢に市販の培養土を入れます。深植えにならないように苗を植え、倒れないように仮支柱を立てて軽くひもで縛っておきます。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。
     活着すると1番花が咲き始め、側枝が伸びてきます。主枝と1番花のすぐ下から出てくる側枝2本を残して、他はかき取ります。仮支柱を50~60cmの3本の支柱に替え、各枝を誘引します。
     ナスは水で太る野菜です。水切れさせないように毎日たっぷり水やりし、乾燥防止のために株元にわらやピートモスなどを敷いておきます。
     開花後、最初の頃は25~30日、最盛期は15日以内で収穫できるので、はさみで切り取ります。
     7月中旬ころ、暑さで株が弱ってきたら、思い切って枝の半分くらいを切り詰めます。主枝と2本の側枝に2枚以上の葉が残るようにします。しばらくすると元気な新芽が伸びてきて、9月いっぱい収穫できます。数百円の苗で、その数倍の価値のある栽培が楽しめます。
     取りたて新鮮なナスを、和食なら漬物や天ぷらに、イタリアンならパスタやピザに、中華ならマーボーなどにご利用ください。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ミニトマト(ナス科トマト属)

    土壌医●藤巻久志

     スキー場のゲレンデに初級者・中級者・上級者向けがあるのと同様に、キッチンガーデンにも難易度があります。大玉トマトは上級者向けです。
     トマトの原産地は強日照で乾燥した中南米のアンデス山麓です。日本では弱日照で多湿の梅雨があります。アマチュアでは梅雨を越すのが難しいです。プロの農家でも雨よけやビニールハウスで栽培をして多湿を防ぎます。
     約30年前、国内にミニトマトが流通するようになりました。ミニトマトは大玉トマトと比べ格段に栽培しやすいので、家庭菜園でも普及しました。ミニトマトは初級者・中級者向けで、日当たりと風通しが良ければベランダでも栽培できます。
     トマトの種まきは生育温度の確保が難しい2月なので、暖かくなってから苗を買い求めると良いでしょう。苗の早植えは根付きしにくく、枯れることもあります。地温が上昇する5月に植え付けます。
     トマトの栽培は支柱を立て、人間の背丈まで育てます。茎葉が大きくなるということは、根もそれだけ張らさなければなりません。培養土がたくさん入る10号(30cm)以上の鉢が必要です。
     トマトの栽培で初級者が失敗しやすいのは、水やりと施肥と脇芽かきです。
     水やりが多過ぎると、土の隙間が水で満たされ酸素欠乏になり根が傷み、ひどいと枯れてしまいます。水やりは朝やって夕に土の表面が乾く程度にします。
     肥料が多過ぎると、栄養成長(茎葉が伸びること)がいつまでも続き、生殖成長(花や実が付くこと)が始まらないことがあります。尻腐れなどの生理障害も出やすくなります。追肥は株の様子を見ながら少なめに施します。
     脇芽かきが遅れると、どれが主枝か側枝か分からなくなり、ジャングルのようになってしまいます。風通しが悪くなり、病気も発生しやすくなります。
     真っ赤に完熟したミニトマトを楽しんでください。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ピーマン(ナス科トウガラシ属)

    土壌医●藤巻久志

     緑のピーマンは熟してくるとトウガラシのように赤くなります。赤いピーマンは青臭さが消え、甘くなり、栄養価も増します。
     しかしなぜ、農家は赤いピーマンを出荷しないのでしょうか。それは熟すのに日数がかかり、青果は日持ちしないからです。緑のピーマンは開花後15~20日で収穫できますが、ピーマンが熟して赤くなるには60日くらいかかり、株への負担も大きくなります。パプリカ(大型ピーマン)のように肉厚ではないので、熟すとしなびやすくなります。
     経済性よりも育てる楽しみを優先するキッチンガーデンでは、数個のピーマンを赤くしてサラダなどの彩りにしてもよいでしょう。子どもにも食べやすく、親子の会話も弾みます。畑でなくても、日当たりの良いベランダなら栽培できます。
     熱帯アメリカ原産のピーマンはナス科でも最も高温性で、発芽適温も生育適温も25~30度です。キッチンガーデンでは発芽と育苗の高温を確保するのは難しいので、5月に苗を購入するのが一般的です。
     10号(30cm)以上の鉢に市販の培養土を入れます。深植えにならないように苗を植え、倒れないように仮支柱を立てて軽くひもで縛っておきます。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。
     活着(根付くこと)すると1番花が咲き始め、側枝が伸びてきます。主枝と1番花のすぐ下から出てくる側枝2本を残し、他はかき取ります。仮支柱を50~60cmの支柱に換え、各枝を誘引します。果実が次々となるので、肥料切れにならないようにします。乾燥に弱いので、株元にわらやピートモスなどを敷いて、水やりを毎日します。
     収穫ははさみで切り取ります。開花後20日を過ぎても外観は変化がないので、取り遅れないように注意します。ピーマンの和名は甘唐辛子で、トウガラシやシシトウも仲間。栽培方法も同じですが、肉詰めやみそ炒めに適しているのはピーマンです。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

  • カブ(アブラナ科アブラナ属)

    土壌医●藤巻久志

     聖護院カブと聖護院ダイコンは、どちらも白く大きな丸形で、とても似ています。聖護院カブはアブラナ属で菜の花の仲間ですから、花は黄色です。聖護院ダイコンはダイコン属に多い白い花を咲かせます。カブの肌はツルツルですが、ダイコンの肌にはひげ根の跡があります。
     カブは大カブ、中カブ、小カブがあり、色で白カブ、赤カブ、青カブがあります。日野菜カブや津田カブのように細長いカブもあります。在来種も数多くあります。
     ベランダで大カブの聖護院カブを作ると、一つのプランターでは2、3個しか収穫できません。プランター栽培では早生の金町系の小カブが適しています。
     カブはシードバーナリゼーション(種子春化)型といって、種が発芽したときから低温に感応して花芽を分化します。その後の高温と長日によってとう立ちは促進されます。1~2月でもプランターにビニールトンネルを掛けて保温すれば栽培できますが、とう立ちの心配の少ない3月下旬から種まきしましょう。
     深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、条間10cmに深さ5mm程度の溝を付けて筋まきします。薄く覆土し、表土を軽く押さえ、種が流れないようにジョウロでたっぷり水やりします。
     発芽して双葉が開いたら、生育の遅い物、徒長した物を間引きます。順次間引きして、本葉4~5枚までに株間を10cmにします。間引いたものはみそ汁の具などに利用できます。
     カブに日が当たると、きれいな白色にならないので、土寄せか増し土をします。追肥は水やりを兼ねて、1000倍の液肥を1週間に1回の割合で施します。
     直径4~5cmになった物から収穫していきます。収穫の遅れは、す入りや裂根の原因になります。
     カブの花言葉は「慈愛」です。優しい食感を浅漬けやシチューなどにしてお楽しみください。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • エダマメ(マメ科ダイズ属)

    土壌医●藤巻久志

     エダマメといえばビール。ビールといえばドイツ。ドイツといえばクラインガルテン(市民農園)。ドイツのクラインガルテンには、ビールメーカーがスポンサーになっているところもあるとか。
     日本でも市民農園が増えています。1990年には市民農園整備促進法が成立しました。その第1条には「この法律は、主として都市の住民のレクリエーション等の用に供するための市民農園の整備を適正かつ円滑に推進するための措置を講ずることにより、健康的でゆとりのある国民生活の確保を図るとともに、良好な都市環境の形成と農村地域の振興に資することを目的とする」と、素晴らしいことが書いてあります。
     ベランダでエダマメを栽培してみましょう。取れたてを食べると、市民農園を借りたくなります。
     エダマメは低温だと発芽しないので、4月下旬から5月上旬に種まきします。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、株間20cmに3~4粒の点まきをします。覆土は種の大きさの3倍が標準です。
     発芽後、順次間引きして本葉2枚までに2本立てにします。乾燥と過湿に弱いので、水やりは朝やって夕に土の表面が乾く程度にします。
     エダマメは根に根粒菌が付いて空気中の窒素を固定し供給するので、肥料は少なくて済みます。追肥は生育状態を見ながら、1000倍の液肥を施します。窒素肥料が多過ぎるとつるぼけ(葉ばかりさま)になって、さや付きが悪くなります。
     本葉4~5枚になったら、倒伏防止のために軽く土寄せし、増し土をします。株元にわらや腐葉土を敷いて、表土の乾燥を防ぎます。本葉5~6枚のときに摘芯すると、脇芽がよく伸びて、さやが多く付きます。
     株の中央部のさやが膨らんできたら、株ごと引き抜いて収穫します。さやが黄色くなってからでは豆が堅くなるので、さやが鮮緑色のうちに収穫します。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ジャガイモ

    土壌医●藤巻久志

     ジャガイモは世界の食料飢饉(ききん)を救ってきました。ロシアが度重なる経済危機を迎えても餓死者を出さなかったのは、多くの国民が「ダーチャ」と呼ばれる市民農園でジャガイモを栽培していたからだといわれています。
     ベランダでのジャガイモ栽培は貯蔵できるほどの収穫量はありませんが、土の中からゴロゴロと芋を掘り上げる経験は楽しめます。ジャガイモの花をこよなく愛したマリー・アントワネットに思いをはせることもできます。
     スーパーに並んでいるジャガイモは「男爵薯」と「メークイン」が多いです。家庭菜園では皮が赤い物、中が紫色の物など数多くの品種から好きな物を選べます。
     3月になったら、日当たりと風通しの良いベランダで、大型プランターや10号(30cm)以上の鉢などに市販の培養土を入れます。種芋は60gなら二つに、それ以上に大きい物は3〜4個に、各切片に芽が均等に付くように切り分けます。
     1〜2日乾かした種芋の切り口を下にして、深さ7〜8cm、株間20〜30cmで植え付けます。
     一つの種芋から数本の芽が出てきます。そのままにしておくと小さな芋しか収穫できません。芽が10cmぐらいに伸びたら、元気の良い芽を1〜2本だけ残します。残す芽の株元をしっかり押さえて、かく芽を横に倒して引き抜きます。
     追肥は水やりを兼ねて1週間に1度1000倍の液肥を施します。芋に日が当たると緑化してしまうので、適宜増し土をします。乾き過ぎや湿り過ぎにならないように水やりをします。6月中下旬になると枯れ始めます。半分以上枯れ込んだら、晴天の日に掘り上げ、日陰で半日ぐらい乾かして保存します。
     取れたてのジャガイモは皮が柔らかく、丸ごと食べられます。自家菜園なので農薬の心配もありません。ゆでジャガイモのバター掛けや丸揚げなどにしてお楽しみください。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ショウガ

    土壌医●藤巻久志

     戸外で作業ができない冬季に、ストーブやこたつで暖を取りながら、春の作付け計画を立てることをストーブ園芸といいます。種苗会社からカタログを取り寄せると参考になります。掲載されている野菜の大半は、ベランダでも栽培できます。
     多くの家庭の冷蔵庫にはワサビやからし、ニンニクなどのチューブ入りスパイスが常備されています。いつの間にかショウガもチューブ入りを使うようになりました。台所におろし金がない家庭もあります。子どもたちはショウガはチューブの中に入っていると思っているかもしれません。
     春になったら、ショウガをベランダで栽培しましょう。添加物のない、本物のショウガです。塊茎の大きさにより大・中・小ショウガがあり、大ショウガには「印度」、中ショウガには「房州」、小ショウガには「谷中」などの品種があります。キッチンガーデンでは、小ショウガを使用し、筆ショウガ、葉ショウガ、新ショウガと順に楽しむと良いでしょう。
     ショウガは高温を好むので、4月下旬から日当たりの良い所で栽培を始めます。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、種ショウガを10cm間隔に、芽を上にして植え付けます。種ショウガは前もって、2〜3芽を付けて50gほどに分割し、2〜3日乾かしておきます。覆土は5cmとします。プランターにビニールを掛け保温すると、発芽が早まります。乾燥と過湿を嫌うので、水やりは朝夕に土の表面が乾く程度にします。追肥は1000倍の液肥を、灌水(かんすい)を兼ねて1週間に1度施します。小まめに増し土をします。
     7〜8月に新芽の元に新しいショウガが付くので、種ショウガを掘り上げないように手で押さえて引き抜き、筆ショウガとして利用します。新しい根が少し肥大したら葉ショウガ、初秋に塊茎が大きくなったら新ショウガとして収穫します。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

夏~秋作

  • サヤエンドウ(マメ科エンドウ属)

    土壌医●藤巻久志

     正月の黒豆に始まって、大相撲夏場所のソラマメ、居酒屋のビールにエダマメなどと、日本人は本当によく豆を食べます。大豆で作られる納豆やみそ汁は毎日のように食卓に上がります。
     エダマメと大豆は同じ植物ですが、未熟の前者は野菜に、完熟の後者は食用作物に分類されます。エンドウもサヤエンドウは野菜、ウグイスマメは食用作物に分類されます。
     マメ科の花はとても魅力的です。サヤエンドウは春先に近縁のスイートピー(ハマエンドウ属)に似た花が咲きます。ベランダでサヤエンドウを栽培すれば、花の観賞と野菜の収穫が楽しめます。サヤエンドウには白花種と赤花種があります。
     サヤエンドウの仲間には、未熟な実を食べるグリーンピースと、豆が熟してもさやが柔らかくさやごと食べられるスナップエンドウがあります。エンドウは畑がなくても、日当たりが良ければ、ベランダでも栽培できます。エンドウの生育適温は15~20度で、幼苗のうちは0度以下の低温にも耐えられます。本葉2~3枚のときが最も寒さに強いので、温暖地では10月下旬から11月中旬に種まきします。
     深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、20cm間隔、深さ2cmで、1カ所に3~5粒まきします。本葉2枚ぐらいまでに間引いて、1カ所2本立てにします。暖かくなると急に伸びるので早めに150cmの支柱を立て、つるを誘引します。
     追肥はつぼみが見え始めた頃から1000倍の液肥を1週間置きに施します。肥料が多過ぎると過繁茂になり、実の付きが悪くなります。過湿も嫌うので、少し乾燥気味に管理します。厳寒期には保湿を兼ねて、敷きわらなどで株元を保護すると良いでしょう。
     さやが大きくなり、中の豆がやや膨らんできた頃が収穫適期です。ゆでたり炒めたりして、鮮やかな緑と独特の歯触りをお楽しみください。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • イチゴ(バラ科オランダイチゴ属)

    土壌医●藤巻久志

     果物屋でも八百屋でも売られているメロンやイチゴは、果物、それとも野菜でしょうか。
     植物的分類では、野菜は毎年種をまいたり苗を植えたりして収穫する一年生の草本作物で、果物は樹木に結実する実を何年にもわたり収穫する永年性の木本作物です。
     ウリ科のメロンは種から育てて、1年以内に収穫を終える草本作物なので、植物的分類では野菜です。イチゴはバラ科で、バラ科は永年作物ですから果物になります。
     農林水産省の統計ではメロンやイチゴは野菜として集計されますが、同省が認可監督する中央卸売市場では果物として扱われます。メロンやイチゴは「果物的野菜」に分類するのが良いのかもしれません。
     イチゴはベランダでも簡単に栽培できます。10月になるとキッチンガーデン向きの品種の苗がホームセンターなどの店頭に並びます。ポット苗に付いているラベルの写真と説明を見て、好みの苗を購入します。
     深さ15cm以上のプランターをベランダの日当たりの良い所に置き、市販の培養土を入れます。株間15~20cmに、クラウン(根茎部分)の根元が見えるくらいに浅植えします。土が乾いたら冬でも水やりをします。
     活着する11月上~中旬と、葉茎が本格的に伸びてくる2月下旬~3月上旬に1000倍の液肥を1週間置きに施します。黄色く枯れた葉や赤くなった葉は、葉の付け根から丁寧にかき取ります。
     品種やその年の気候によっても多少違いますが、5~6月に収穫できます。赤くなった物から収穫します。果実には手を触れずに、果梗(かこう)のところを爪で摘み取ります。
     収穫が終わると、親株からランナーが伸びて子株ができます。この子株を育てて苗を作ります。これを毎年繰り返します。
     数年後にイチゴを収穫しながら「このイチゴは〇〇ちゃんが生まれた年から栽培しているのだよ」という会話ができるかもしれません。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ニラ(ヒガンバナ科ネギ属)

    土壌医●藤巻久志

     韮(ニラ)という漢字を見ると、山梨の韮崎高校や静岡の韮山高校を思い浮かべます。どちらも通称「韮高」です。韮崎高校はサッカー、韮山高校は野球の伝統校です。両校の元気の源はニラレバ炒めではないかと勝手に想像しています。
     両校とも文武両道で生徒はとても勤勉だと思います。ところがニラの別名は懶人草(らいじんそう)で、懶人とは怠け者のことです。ニラは栽培が簡単なので、怠け者でも作れるからです。
     暑さや寒さに強く、ベランダのプランターでも栽培できます。半日陰でも丈夫に育ちます。多年草なので一度種をまけば根が残って毎年収穫できます。種まき適期は3~4月です。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、10cmの間隔で1カ所に約10粒の点まきをします。薄く覆土し、軽く鎮圧します。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。
     草丈が約10cmになったら、1カ所3~4本に間引きします。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。さらに草丈が伸び20~25cmになったら、株元を4~5cm残してはさみで切り取り収穫します。株が充実してくる翌年からは、年に4~5回収穫できます。
     夏から秋にかけては花蕾(からい)が伸びてきて、白いきれいな花を咲かせます。花を楽しんでも良いのですが、開花・結実させると株が弱るので、早めに摘み取った方が良いです。摘み取った花茎は、おひたしなどにすると美味です。
     冬になると地上部は枯れます。枯れ葉は病原菌のすみかにならないように、きれいに刈り取っておきます。根は生きているので、春になると新葉が伸びてきます。3~4年たつと株が弱ってくるので、掘り上げて株分けして植え替えます。
     ニラはギョーザの具、みそ汁の実、卵とじ、おひたし、あえ物などいろいろな料理に使えます。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

  • 小松菜(アブラナ科アブラナ属)

    土壌医●藤巻久志

     「漬け菜」とは一般には漬物に使用する菜っ葉ですが、農学では非結球のアブラナ属の葉菜のことをいいます。野沢菜やチンゲンサイなどがあり、結球するハクサイやキャベツは含みません。
     江戸幕府第8代将軍徳川吉宗が命名したといわれる小松菜は、関東地方で栽培されてきたツケナの一つです。1970年代に世界初の小松菜の交配種「みすぎ」が育成されると、新しい産地が次々にでき、全国の野菜売り場に並ぶようになりました。
     交配種は雑種強勢と両親のいいところ取りによって、生育が旺盛で収量が上がり、病気に強く味も良くなります。現在のツケナの大半は交配種です。日本の野菜の育種は世界のトップクラスです。
     交配種はそろいが良いので、規格通りに出荷する生産者にとっても、同じ価格で販売する流通業者にとっても、大きなメリットがあります。一斉に収穫はしない家庭菜園では、収穫期に幅がある「固定種」の方が良いかもしれません。
     小松菜は暑さや寒さに強く、ほぼ周年栽培ができます。深さ10cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、5cm間隔に筋まきします。小松菜は種が細かく多くまきがちですが、発芽が良いので厚まきすると間引きに手がかかります。薄く覆土をして軽く鎮圧します。発芽まで乾燥させないようにします。
     発芽後、順次間引きして、本葉4~5枚のときに株間を約5cmにします。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。本葉4~5枚になった物から収穫し、本葉7~8枚までに終えるようにします。
     水菜、広島菜、芭蕉菜など、小松菜以外のツケナも栽培方法は似ています。子どもの頃のお雑煮やみそ汁に入っていた菜っ葉を思い出して、種まきするのも良いでしょう。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

  • シュンギク
    シュンギク(キク科シュンギク属)

    土壌医●藤巻久志

     シュンギクの花を見たことがありますか。
     果菜類は花が咲かないと実が付きませんが、葉菜類や根菜類は花が咲いてしまうと収穫に至りません。普通の栽培ではシュンギクの花を見ることはありません。秋まきしたシュンギクを春まで残しておくと、黄色や半黄半白の美しい花が咲きます。シュンギクはもともと花を観賞する植物で、食用としているのは東アジアだけです。
     シュンギクの収穫方法には、根を付けて抜き取り収穫する「抜き取り収穫」と、脇芽を摘み取り収穫する「摘み取り収穫」があります。「抜き取り収穫」は関西で、「摘み取り収穫」は関東で多く行われています。
     シュンギクの品種は大葉種、中葉種、小葉種に分類されます。「お多福」などの大葉種は主に関西以西で栽培され、脇芽の出が良くないため「抜き取り収穫」されます。全国各地で栽培されている中葉種は、「抜き取り収穫」には株元からの分枝が多い株張り型品種が、「摘み取り収穫」には節間が長く伸びやすい品種が使われています。キッチンガーデンには、脇芽を次々と収穫でき、栽培期間が長い「摘み取り収穫」が適しています。
     シュンギクは発芽も生育も適温が15〜20度で、日当たりの良いベランダなら3月から10月まで種まきすることができます。深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、条間15cmに筋まきします。好光性種子なので薄く覆土し軽く押さえ、たっぷり水やりします。発芽するまで乾燥させないようにし、発芽したら順次間引きし、本葉4〜5枚のときに株間15cmにします。追肥は1000倍の液肥を1週間置きに施します。
     草丈が20〜30cmになったら、下の方の葉を4〜5枚残して株の上部を摘み取り、脇芽を出させます。脇芽が15 cmくらい伸びたら順次収穫していきます。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ニンジン
    ニンジン(セリ科ニンジン属)

    土壌医●藤巻久志

     団塊の世代が小学校の図工の時間にクレヨンで描いたニンジンは、ゴボウのように長い物でした。大長ニンジンの種はフワフワの「毛付き」で売られていました。昭和40年代になると収穫が楽な短根ニンジンが普及し、種も「毛除」になり、まきやすいコーティング(ペレット)種子も開発されました。
     大長ニンジンは子どもが嫌う野菜の筆頭でした。現在の短根ニンジンは、癖がなく甘味が強い品種が多くなりました。ニンジンジュースが好きな子どもも増えました。
     ニンジンの種は独特の香りがし、毛除した種はわら草履に似ています。2〜3mmの小さな種が土と水と太陽によって、おいしいニンジンになるから不思議です。
     そんなワンダーランドをベランダで展開しましょう。短根ニンジンなら深さ20cm程度のプランターでも栽培できます。市販の培養土を入れ、日当たりの良い所で栽培してください。日陰では茎葉ばかりが茂って、根が太りません。
     ニンジンなどの根菜類は移植を嫌うのでじかまきします。5mm程度のまき溝を付けて筋まきします。好光性種子なので覆土はごく薄くします。種が土から水分を吸いやすくするために、表土を軽く手で押します。発芽するまでは土が乾かないように新聞紙を掛けておきます。
     本葉1〜2枚になったら葉の密生しているところを順次間引きし、本葉5〜6枚のときに株間10〜15cmにします。間引きした物はサラダなどにして食べられます。根部の肩が日に当たると緑色に変色してしまうので、間引き後は根が露出しないように土寄せ、または増し土をします。追肥は1000倍の液肥を7〜10日置きに施します。
     種まき後3〜4カ月で収穫できます。取れ立てのニンジンは葉も天ぷらなどにして食べられます。店頭では売られていないニンジンの葉を楽しめるのは、キッチンガーデンの醍醐味(だいごみ)です。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • レタス(リーフレタス・ロメインレタス)
    リーフレタス(キク科アキノノゲシ属)

    土壌医●藤巻久志

     レタスが日本で本格的に栽培されるようになったのは、戦後の1946年に進駐軍が東京都調布に礫耕(れきこう:水耕栽培の一種)施設を作ってからです。当時の日本人は葉物を生で食べる習慣はありませんでした。下肥で栽培した葉物は非常に不衛生なので、化学肥料が普及するようになりました。化学肥料はお金で買うことから金肥ともいい、それで栽培された野菜は清浄野菜と呼ばれました。
     レタスが一般家庭に普及した契機は、1964年の東京オリンピックです。映画『エデンの東』で見たレタスが、日本でも千葉県館山などに産地ができ、食卓に上るようになりました。1970年代になるとレタスを挟んだハンバーガーを食べるようになりました。
     レタスは玉レタス、リーフレタス、コスレタス、茎レタスの四つに大きく分類されます。キッチンガーデンにはじかまきができ、病虫害にも強く生育が早いリーフレタスがお薦め。
     日当たりの良いベランダに深さ15cm以上のプランターを置き、市販の培養土を入れます。条間15cmの筋まきをします。好光性種子なので覆土はごく薄くし軽く鎮圧します。種が流れないように、発芽するまでは霧吹きなどで優しく水やりします。
     発芽したら細い物や徒長した物などを間引き、株間を15cmにします。水やりは朝にし、夕に土の表面が乾く程度に。追肥は1週間置きに1000倍の液肥を施します。
     本葉10枚以上になったら、株ごと抜いて収穫するか、下葉からはさみで切り取りながら利用します。
     リーフレタスは玉レタスより栄養価が高く、カロテンを多く含んでいます。生のままサラダにして食べるのが一般的ですが、炒め物、スープやみそ汁の具、チャーハンなどにしてもおいしいです。
     リーフレタスはグリーンとレッドの品種があります。どちらも照りがあり美しく、波打つ葉形が面白いので、観賞用としても楽しめます。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ソラマメ

    土壌医●藤巻久志

     ソラマメは漢字では、さやが空を向いて付くから空豆、さやが蚕に似ているから蚕豆と書きます。
     1980年代に宮城県北部の築館町(現栗原市)に春まき栽培の産地ができるまでは、ソラマメの秋まき栽培の北限は同県南部の村田町とされていました。当時は宮城県以北ではソラマメの流通はなく、エダマメのようにさやごとゆでるものだと思っている人もいました。
     江戸っ子はソラマメを食べないと夏を迎えられません。大相撲が蔵前国技館で行われていた夏場所、秋葉原の旧神田青果市場では房州(千葉県)の初物のソラマメが初日に最高値で取引され、千秋楽に向かって徐々に値下がりしていきました。今は、鹿児島産のソラマメが年内から出回っています。
     ソラマメの豆は空気に触れるとすぐに硬くなるので、さや付きのまま流通しています。収穫した瞬間から鮮度が落ちていきます。キッチンガーデンなら、新鮮取れたてのソラマメを味わうことができます。
     10号(30cm)以上の鉢や大きなプランターに市販の培養土を入れ、日当たりと風通しの良いベランダで育てます。10月から11月上旬が種まき適期です。鉢なら真ん中に、プランターなら株間25cmに2〜3粒を、「おはぐろ」を斜め下に2〜3cmの深さに押し込みます。本葉2枚までに間引きして1本立てにします。
     追肥は耐寒力をつけるための12月と、生育が盛んになり始める2月に1000倍の液肥を施します。窒素肥料が多過ぎると、茎葉ばかり茂ってさやが付かないことがあります。防寒と保湿のために、株元にわらや腐葉土を敷きます。冬の間は乾燥気味にし、生育が盛んになったら、午前中に水やりします。水のやり過ぎは根を傷めるので、夕方には土の表面が乾く程度にします。
     春に分けつした茎が伸びるので、元気な物を5〜6本残し、他は切り除きます。さやが十分膨らんで、上向きだったさやが横から下向きになったら収穫適期です。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • バジル

    土壌医●藤巻久志

     ハーブという言葉が日本で多く使われるようになったのは、世界各国のレストランが大阪万博(1970年)に出店した頃からです。代表的ハーブのバジルもその頃から普及するようになりました。最もポピュラーなのは光沢のある葉のスイートバジルです。属名や和名のメボウキ(目箒)は、種を目に入れると寒天のような物質が出て目のごみを取り去るからだといわれています。
     「イタ飯ブーム」(1990年ころ)の際、葉の緑色がイタリア国旗を象徴していると話題になりました。白色はチーズ、赤色はトマトのマルゲリータピザやカプレーゼサラダなどです。
     熱帯アジア原産の多年草のバジルは、日本では越冬できないので一年草として扱われます。発芽適温も生育適温も20〜25度ですから、種まきは遅霜の心配がない4月中旬以降です。畑がなくても、日当たりの良いベランダで栽培できます。
     深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、20cm間隔で種を4〜5粒ずつ点まきをします。好光性種子なので覆土はごく薄くし、十分水やりします。本葉2枚の頃に健全な苗を残して1本立てします。追肥は1000倍の液肥を1週間置きに施します。
     本葉10枚ぐらいになったら、摘芯して脇芽を伸ばします。摘芯することによって、葉が多く出るようになります。
     短日植物なので、7月中旬からシソに似た白い花を付けます。花が咲くと株が老化しやすいので、花穂は早めに摘み取ります。
     順次葉を摘み取り収穫します。多めに収穫したときは乾燥や冷凍、ペーストにして保存し、香りを一年中楽しみます。
     イタリア語ではバジリコ。ゆでたてのスパゲティに生のバジルの葉を刻んであえればバジリコスパゲティになります。さらにトマトを加えれば緑・白・赤のイタリアンカラーになります。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • チンゲンサイ

    土壌医●藤巻久志

     チンゲンサイやタアサイなどの中国野菜がスーパーに並ぶようになったのは、日中国交正常化前年の1971年の広州交易会に参加した種苗会社が種を日本に持ち帰ったからです。
     チンゲンサイやタアサイの種は、すでに遣隋使や遣唐使の時代に日本に持ち込まれていたはずです。それらが根付かなかったのは、アブラナ属の野菜だからです。ほとんどのアブラナ属は他家受粉で、周りに菜の花が咲く畑では、他のアブラナ属と容易に交雑し、品種独自の形質を維持できません。今は採種技術の向上により、安定した品質の種が供給されるようになっています。
     チンゲンサイは、1970年代は青軸パクチョイや青茎パクチョイとも呼ばれていました。1983年に農林水産省が流通の混乱を防ぐためにチンゲンサイに名称統一しました。漢字では青梗菜と書き、梗は芯の堅い茎を意味します。
     チンゲンサイは生育期間が短く、暑さ、寒さに強い野菜です。4月から10月まで種まきできます。春まきや夏まきはアオムシやヨトウムシなどに食害されやすいので、被害の少ない秋まきの方が栽培は楽です。
     日当たりと風通しの良いベランダならプランターで栽培できます。深さ10cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、条間10cmの筋まき、または10cm×5cmの点まきをします。順次間引き、本葉3〜4枚で1本立ちにします。農薬を使用しないキッチンガーデンでは、間引きした物も間引き菜としてみそ汁の具などに利用できます。
     土が乾燥すると肥料の効きが悪くなり、生育も鈍化します。水やりは朝やって、夕に土の表面が乾く程度にします。追肥は1週間置きに1000倍の液肥を施します。
     秋まきでは40〜60日で収穫できます。草丈15cmが目安です。チンゲンサイは中国野菜ですが、おひたし、グラタン、油炒めなど和洋中に利用できます。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

  • ホウレンソウ

    土壌医●藤巻久志

     ホウレンソウはアカザ科に分類されてきましたが、DNAが決める新分類ではヒユ科になりました。ヒユ科野菜にはビート、オカヒジキ、フダンソウなどもあります。
     60代以上の人たちは、ホウレンソウは赤い根に栄養があると親に教えられました。当時の赤い根のホウレンソウは東洋種で、種は針種といってとげがありました。現在のホウレンソウの品種のほとんどは、西洋種と東洋種とを掛け合わせた交配種です。丸種の西洋種を母親に、針種の東洋種を父親にして種を取っているので、種は母親と同じ丸種です。
     ホウレンソウの発芽適温は15〜20度(最低4度〜最高30度)ですから、秋は9月から11月まで種まきできます。寒さに強く、マイナス0〜3度でも緑を失わずに収穫できます。畑でなくても、日当たりの良いベランダなら栽培できます。
     深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、浅くまき溝を付け条間10cmで筋まきします。種が隠れるくらいに薄く覆土します。発芽したら、葉が重なったところや生育遅れを順次間引きし、本葉4〜5枚までに株間3〜4cmにします。追肥は1000倍の液肥を1週間置きに施します。
     草丈が15cmくらいになった物から収穫していきます。冬場はビニールや不織布を掛けて保温すると、生育が早まります。
     ホウレンソウはおひたしやバター炒め、常夜鍋など加熱して食べるのが一般的でした。今は生食するホウレンソウサラダが外食の定番になっています。家庭でも取れたてのホウレンソウにカリカリに炒めたベーコンを散らし、お好みのドレッシングを掛けてお楽しみください。
     ホウレンソウは水菜やルッコラなどのようにごく若取りしてベビーリーフとしても利用できます。若い葉はシュウ酸含量が少ないので、えぐ味がなくおいしく食べられます。

    藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土づくりに関して幅広くアドバイスを行う。

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